自死遺族のブログ

ある日突然、自死遺族になった。私の運命は変わった。

父の遺書

 

父の遺書の中に、こんな1文がありました。

 

「つまちょの1番綺麗な時期を

この目で見られなかった事が

とても残念です。」

 

つまちょ、当時27歳。

 

父の思う、1番綺麗な時期は

20代前半とかなのかな??

 

でも正直、思いました。

「これから1番綺麗な時期、

1番幸せな時期がきっと来るのに

どうして待っていてくれなかったの?」

 

1番綺麗な時期とは

父親的には、いつの事だったのでしょう…?

 

結婚する姿が、

もう見られないと思ったんでしょうか?

 

 

兄に精神障害があるので、

私が結婚することは難しいと

思ったのかもしれません。

 

いろんな事情はあれど、

私は父が亡くなって1ヶ月半後に出会った人と

半年後に婚約し、

父が亡くなって1年半ほどした時に

入籍しました。

 

 

もちろん、結婚が必ずしも幸せとは限りません。

結婚だけが全て、出産だけが全てだとは

全く思っておりません。

 

でも、

兄の精神障害のことも受け入れてくれる夫と

夫の家族にも出会えて、

新しく家族が増えて、

私はいまとても幸せです。

 

コロナが少し収束していた時期に

結婚式を挙げました。

 

バージンロードは、父の遺影と母と

3人で歩きました。

 

もし父が、私とバージンロードを歩くことや

私の花嫁姿を「1番綺麗な時期」

と想像していたとしたら。。。

 

 

父の死は無駄になってしまいますよね。

 

だって、生きてれば

見られたんですから。

 

早まらないで欲しかった。

諦めないで欲しかった。

信じて待っていて欲しかった。

 

仮に結婚ではなくても

私はきっと自分の力で

仕事に打ち込んだり、友達と遊んだり

自分なりの幸せを手に入れていたのに。

もしかしたらそれが「1番綺麗な時期」

になっていたのかもしれないのに。

 

 

そんな可能性すら

考えられなくなるのが

心を病む

という事なんでしょうか。

 

 

人間ってとても視野が狭いです。

どうしても自分中心に考えてしまう。

 

でも、

「いま自分中心で考えてるな」って

一度立ち止まって欲しかった。

 

私のことを大切に思うなら

父が自殺して私がどんな気持ちになるか

もう少し考えて欲しかった。

 

これが私の正直な気持ちです。

 

 

 

 

 

なぜ自死遺族は周囲に隠すのか?

 

「父が亡くなりまして…」

「お気の毒に…ご病気だったんですか??」

 

このような会話で私はいつも

「はい」と答えてしまいます。

理由は、

自殺で亡くなったことを言いたくないから。

 

日本の自殺者の人数から考えると、

身近にも自死遺族がいてもおかしくないのです。

いえ、もっと言うと

居るはずなのです。

 

ではなぜ、自死遺族の存在を、知らず

周囲で見かけないのでしょうか?

 

理由はひとつ。

自死遺族の方々は、死因が自殺であることを

隠したいから。

 

なぜ、家族が自殺した事を隠したいのか

その理由を分析してみます。

 

 

①可哀想だと思われる

 

あるあるかもしれませんが

家族が亡くなったと言われれば気の毒に思いますよね。

でも、家族を亡くした方としては、

気の毒に思われることですら

面倒だったり鬱陶しいと感じる時もあります。

 

自殺した人は、大抵の場合

若かったり、仕事をしていたり、そうでなくても

まだそこまで大往生とは言えない年齢なので、

余計に周囲から見れば、可哀想、不幸だと

思われやすいのではないでしょうか。

 

その周囲の思いを無下にしたくない、

でも自分を守りたくて、

死因にまで踏み込んだ話をしないという事もあると思います。

 

 

②家族の支えが不十分だったと思われる

 

これは、私自身がそう思って

周囲に言えないでいる部分でもあります。

 

おそらく、周囲の人は

「あなたのお父さん自殺したんだね。

じゃあ、あなた、

娘として不出来だったんだろうね」

とはならないでしょう。

 

問題は、自死遺族自身が

自分のせいではないか??

思ってしまっているという部分です。

 

自死というのは自分で死を選んでいるので

必ず原因はあると思います。

 

それが娘の不出来であれ、心の病気であれ、

原因は原因。

 

自殺という死因を話すだけで、

その原因まで勝手に推測されるのは、

自死遺族としては遺憾です。

 

③タブー視されている

 

自殺=話してはいけない

日本って(世界もかもしれませんが)

こんな考え方ありませんか??

 

でも、例えば友人が自殺してしまったとして

その友人との楽しい思い出まで封印してしまうのは

その友人がせっかく残した生きた証を

わざわざ消してしまうような気がして、

私はあまり好きではありません。

 

大切なのは、死に方ではなくて

生き方じゃないでしょうか??

 

芸能人の自殺も、

衝撃的だからこそ、自殺というワードだけが

ニュースになり、話題になり、

結果その芸能人の名前とセットで必ず「自殺」が

出てくるようになる。

 

私は、生きていた頃の父の話がしたい。

楽しかった思い出は楽しかったと話したい。

そう思っています。

 

 

 

自死遺族の方が、ご家族の死因を隠すことを

否定するつもりはありません。

私自身も本当に大切な相手にしか、

本当のことは話していません。

それは自分や家族を守るためです。

 

 

 

自殺のことをどう考えていたか

 

私が自死遺族になる前。

父が自殺する前。

私にとって「自殺」は、全然

身近な物ではありませんでした。

 

知り合いや親戚に、自殺した人は居なかったし

「自殺はしてはいけないこと」

という日本の教え?を受けていたので、

 

弱い人が自殺する

悪い人が自殺する

 

という暗黙のルールみたいな物が

自分の中にありました。

 

自殺した本人に対して

 

どうしてもう少し頑張れなかったんだろう?

どうして頂いた命を大切にできないんだろう?

 

という考えもありました。

 

自殺してしまった本人に対しての気持ちはあっても、

その家族がどのように感じているかなんて、

想像した事もありませんでした。

 

では、自殺は弱い人がするのでしょうか??

自殺は悪いことなのでしょうか??

 

父の自殺から2年半以上経った今も、

その答えは出ません。

きっと一生出ないんでしょう。

 

ただひとつ言えるのは、

誰にでも絶望が訪れる可能性はある

という事。

 

絶望すると、人は、何をするか分からない。

 

傍から見て、絶望するような状況でなくても

本人が絶望する事はあるのです。

 

それは、他の誰かに対しての絶望の場合もあるし

自分に対しての絶望の場合もある。

 

父は、お金にも仕事にも困っていませんでした。

 

でも、自分自身に絶望してしまった結果

自死という方法で、逃げてしまったのだと思うのです。

 

別の言い方をすると、

自死という方法でしか

自分を守れなかったのだと思うのです。

 

自分の弱さを受け入れることが、

きっと父には出来なかったのだと思うのです。

 

娘としてとても悲しいけれど

父の気持ちは少しだけ分かります。

 

 

自殺を容認したり、

肯定するつもりはありません。

 

もしこの記事を読んでいる方で、

自殺を考えている方がいたら、

私でもいい。病院でもいい。友達でも兄弟でも

いのちの電話でもいい。

自分のために、どうか

助けを求めてあげてください。

 

 

 

 

 

 

助けられた歌

 

父の死後、

助けられた歌があります。

 

B’zさんの

TINY DROPSという歌です。

 

当時の職場の上司(B’zファン)が

同じくご兄弟を自死で亡くされた遺族の方で、

この曲に助けられたから聞いてみると良いよ。

とのことで。

 

私はB’zはOCEANぐらいしか知らなかったのですが

この曲は歌詞がとても良くて

心に響きました。

 

会えないのはつらいけれど

それは変えられないこと

最後には僕も行くから

その日までのさよなら

 

旅を終え生まれた場所に

戻るあなたに手を振ろう

精一杯に手を振るよ

 

そうか。

父は、旅を終えたのか。

生まれた場所に戻っただけなのか。と

少し心が納得出来たようなきがするんです。

 

当時は、気持ちが晴れてはいけないような

気がしていました。

自分がまるで、大罪人であるかのような。

 

でも、きっとそれは違う。

父は父の生き方をして、死に方を選んだだけ。

そこに私は関係はあるけれど

きっと関与は出来なかったのでしょう。

 

娘として、

父の生きる理由になれなかったことは

今でもとても悔しいです。

 

自分を責め、

起きてしまったことを責め、

毎日が苦しい自死遺族の方々の気持ちが

少しでも晴れることを祈って…

 

いま、父をどう思うか

 

過去の事や、自殺した当時のことを書く前に

現在の私の暮らしや、思いを少し書きます。

 

現在、私は結婚して、夫と2人で暮らしています。

父が亡くなった1か月半後に出会った夫なので

父に紹介する事は出来ませんでした。

 

先日、夫に聞いてみた。

 

「もし、私のパパに会えるなら、

何を話したい??」

 

夫はしばらく考えた末、

(私にとっては)意外な事を答えました。

 

「なんて事してくれたんだ、と

怒ると思う」

 

と。

 

滅多に怒らない夫なので正直意外でした。

 

でも、

私が心から傷ついて、そして

自分を責め続けた日々を知っていて

支えてくれた夫にしてみれば

当然なのかもしれません。

 

私ももし、、、大切な人の家族が自殺したら

なんて言葉を掛けるだろう??

どんな気持ちになるだろう??

 

想像してみようとしたけど

分からないなぁ………

 

将来私と夫が、もし

子供を作るという決断をして

無事に授かったとしたら、

その子にはいつ真実を話すんだろう??

 

 

 

 

 

自死遺族になる前

こんにちは。

 

自己紹介といっても、自死遺族です、くらいしかないので(笑)

ます、自死遺族になる前の私の話をします。

 

私は三人兄弟の末っ子という立場で産まれました。

 

父は当時、東京大学を卒業後

海外の専門分野の大学院を卒業したばかり。

その海外で姉と兄が生まれ、帰国後すぐに私が生まれました。

 

父は、真面目で冗談が通じない、

プライドが高くて仕事ができる、

そんな人。

 

趣味は電車の時刻表(笑)というか数字。

恐ろしい程に記憶力がある人でした。

これは兄にまるまる受け継がれてます。

 

 

父はとてもとても仕事が忙しく、

たまに休日に遊んでもらったくらいの記憶しかない。

 

母は父の真逆のような人で、

明るくプライドも悩みも無く(笑)、

正直、おしどり夫婦っていう感じじゃありませんでしたね。

 

このブログでは、今後、父の自殺についてや

その時の家族の様子等にも触れていくことになると思います。

 

自殺の善し悪しを語り合う場ではない事だけ、ご了承ください。

私自身、自殺が良い事だとは全く思っておりません。

でも、自殺が悪であるとも言いたくないのです。

それは父を否定してしまうような気がして。